曲面投影とマルチ・プロジェクション・・・(3)

航空機や船舶などの操縦訓練用のシミュレータやバーチャル・リアリティの研究では、球面や円筒形のスクリーンに複数のプロジェクタで投影し、臨場感のあふれるバーチャル空間を演出するための、さまざまなマルチ 投影技術(マルチ・プロジェクション)があります。  

しかし、複数の部分からなるコンテンツをスクリーン上で合成させる事を想定してプロジェクタが開発されているとは思えません。 ここでは、現在のテクノロジを利用してマルチ投影を実現する場合の課題を解説します。



エッジブレンディング

ソフト・エッジブレンディングは映像信号にデジタル的にグラディエーションをかけ、相互に重なるオーバーラップ領域を均一とする技術です。
ドーム投影等のケースでは ブレンディング領域は上下左右の4辺だけでな くプロジェクタの投影面が複雑な形状で複数、重なり合うことがあります。 また、オーバーラップの形状も単純な四角形ではなく楕円や三画形になる場合が多くなり、どの部分でも同じグラディエーションカーブとなるようにする必要があります。

一般に、平面や円筒(シリンドリカル)スクリーンではオーバーラップの形状は長方形のような直線的な形状になり、グラディエーションの処理は比較的容易で、物理的な遮蔽 板による影 (レンズに近いほどグラディエーションの幅が広くなる) でブレンディングの効果を利用可能ですが、球面スクリーンやプロジェクタの打ち込み角度が大きい場合はオーバーラップ領域が曲線によって囲まれる形状となり複雑なグラディエーションの処理が出来るシステムが必要です。 下図右は曲面スクリーンの重なり合いの例。
 

エッジブレンディングは隣り合う画面のジオメトリ補正が完全に一致しなくてはなりません。

カラーマッチング

隣り合うプロジェクタのカラーが同系色でないとオーバーラップ領域を境として、色が変わりエッジブレンディングの効果が発揮できません。

それぞれのプロジェクタの

  • 輝度
  • 色調
  • 色温度
  • ガンマ

が一致する必要があり、調整は専門技術を要します。 特にガンマ特性の違いは、RGB信号の色レベルを意図的に下げるソフトエッジブレンディングで、オーバーラップ領域の色が微妙に違ってしまう、トラブルの原因になります。

液晶パネルなどでは画面の場所によって色調が変化する色むらが見られます。 このような場合エッジブレンディングはその効果を発揮できないことになります。 ケースによってはブレンディング領域を幅広く取り、プロジェクタ間のばらつきを吸収する必要があります。

ブラックレベルと夜景表示

ソフト・エッジブレンディングは、2つの画面が重ね合わせ部分(オーバーラップ領域)を電気的に加工して均一な輝度を得るものです。 しかし、CRT方式や一部の特殊なプロジェクタを除いて、液晶パネル型やDLP型では、光源の遮断の度合いで階調を表現 するので、映像ソースが完全に黒色であっても照射光は存在し、重ね合わせ部分は2倍の明るさになってしまう。  プロジェクタではこの性能を『コントラスト比』で表示しています。 

これは、ビジュアル・シミュレータで夜景のシミュレーションを行う場合に問題になります。

光出力(明るさ、ANSIルーメン)の小さいプロジェクタでは高コントラスト比が得られる傾向にあり、現在入手可能なプロジェクタは1000ANSIルーメン以下のプロジェクタで3000:1から10000:1程度のスペックを誇る機種があるが、明るさが2000ANSIーメン以上の プロジェクタでは2000:1以下のコントラスト比(実質は数百:1程度と思われる)であり、ブラックレベル問題の解消にはさらに工夫が必要です。 高光度プロジェクタの中には光学アイリス機構による高コントラスト比を謳っているものもあります。 夜景におけるブラックレベルの問題を解決するにはコントラスト比を現状から2桁以上の改善が必要と思われ、将来の技術革新に期待する以外ありません。  

しかし、人間の視覚は、重なり部分の輪郭を注視する傾向があり、輪郭部分だけをぼやけさせる事によって、実用上、ソフト・エッジブレンディングと併用して、十分なブレンディング効果をあげることが可能です。

プロジェクタに写真のような遮蔽板を取り付け(Night Level Aperture)重なり部分の輪郭を、ぼやけさせます。

他に、オーバーラップ領域以外の部分のオフセットレベルを上げ、明るくし、調和させる方法があります。 しかし、夜景画像の品質が落ちる懸念があります。